SAS(睡眠時無呼吸症候群)用スプリントの顎位の設定の仕方は過去の記事を拝見していただくとして、ここではどうしても咬合誘導が上手くいかない場合の有効な手段をお教えしたいと思います。まずは模型調整です。過度なアンダーカット部分は普通石膏等で予め埋めておきます。そして、さらに細かなアンダーカット部分はパラフィンワックス等でブロックアウトを行い、全面にワセリン(分離材)を薄く塗布し、その上から即重のクリアでレジン筆積み法で上下別々の簡易的なスプリントを作製しておきます。そして、この簡易スプリントを用いて診療サイドにて咬合誘導を行うのですが、ポジションは水平位で患者さんの無理のない咬合誘導を心掛けて下さい。極端(無理)な誘導は顎関節症を誘発する恐れがありますのでくれぐれも注意が必要です。そのようにして大体この辺りかな?と思う設定位置でまず仮止めを行います。その際、基準になるので正中ラインを上下のスプリントにマーカーで記しておくと良いです。仮止めには強度のあるパターンレジンが適してます。その後、パターンレジンの硬化を確認しましたら、上下仮止めしたスプリントを口腔外に取り出し、パターンレジンをさらに足して強度を上げます。軽くトリミングを行い、患者さん自身が仮止めしたポジションに咬合誘導が出来るかのチェックを行います。この場合も水平位で行います。仮止めの位置にきちっと違和感なく戻ればOKなのですが、実際は困難を極めます。なので、ダメなら何回でもダイヤモンドディスク等で上下の簡易スプリントをセパレートし、同じ作業をくり返しながら、適切なポジションを導いていきます。そのようにして得られた咬合誘導の精度は抜群です。あとは上下固定された簡易スプリントを作業模型に装着してラボに送れば適合精度の優れたSAS用スプリントの出来上がりです。もう金輪際、再製に悩まされることはありません。デンティスト、患者さん、テクニシャンにWIN‐WIN‐WINの咬合誘導法、下準備等の作業はたしかに増えますが、その分、ここまでやるとテクニシャン(技工士さん)には一目置かれるようになります。
※画像はイメージです。①模型調整を終えた作業模型、②上下簡易スプリント、③咬合誘導後の上下スプリントの状態
内田歯科医院 入れ歯研究所 内田将士



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